肉食恐竜と言えば、口の中に鋭い歯がずらりと並んでいるのが印象的です。
映画でもそうですが、口を閉じても歯がむき出しになってる状態で描かれることが多いですね。
でもこの表現、間違いの可能性が高いんです。
私たち人間は、口を閉じれば歯は見えないと思います。
なぜなら唇があるからですね。
もしも唇が無かったらどうなるでしょう。
常にヨダレがダラダラになってしまいます……。
人間の場合、1日に出る唾液の量って1日に必要な水分量の約1.5倍なんですって。
つまり唇が無くて常にヨダレを垂れ流しにしていると、それだけで干からびてしまうわけです。
また、歯は乾燥に弱いという性質も持っています。
したがって陸上に暮らす生き物は基本的に唇があり、歯はあまり見えません。
現在の東南アジアなどにオオトカゲという生物がいます。
彼らの頭骨を見ると、ほとんど肉食恐竜と変わりません。
しかし実際に生きてる姿を見ると、口を閉じてるときはもちろん、口を開けてもほとんど歯が見えないんですよね。
以上の理由から、肉食恐竜もあまり歯が目立ってなかった可能性が高いです。
下の歯は多少見えたかもしれませんが、上の歯はほとんど見えなかったでしょう。
ただし、ここに展示されているスピノサウルスやスコミムスは魚を主食にしていて水辺で生活していたと考えられます。
もし食事以外の時も水中で生活していたのであれば、脱水になる危険性もないので唇は必要ありません。
現代のワニがまさしくそうですね。
つまり、ティラノサウルスなどの一般的な肉食恐竜は歯が見えず、スピノサウルス等の魚食性の恐竜は歯が見えてるというのが正しい表現(の可能性が高い)です。
しかし……
困ったことに肉食恐竜の絵を描くとき、歯が見えないと迫力が出ないんですよね。
おばあちゃんみたいに見えちゃうんです。
ちなみに、上で「現生の陸上動物は歯が隠れてる」と書きましたが、象やイノシシなどの牙は例外です。
これらの牙は、咀嚼の為ではなくアピールの為に発達しています。
つまり「牙が見えてた方がカッコいい」と感じるのは人間だけでは無いのでしょう。
エンターテイメント性(カッコよさ)をとるか、生物学的正確性をとるか──
悩ましいところです。