恐竜の巨大化②

アルゼンチノサウルスのような、巨大な竜脚類の食事について見ていきましょう。

彼らは植物食の恐竜で、主に木の葉っぱを食べて生きていました。


現代の牛や象もそうですが、改めて考えてみると「植物だけを食べて大きくなる」って凄くないですか?

肉に比べて植物はあまり栄養がありません。
そこで体の大きな植物食の動物は、大量にエサを食べる必要があります。

牧場の牛舎のイラスト

例えば牛の場合、1日に60Kgもの草を食べるそうです。
体重が600Kgくらいなので、ちょうど体重の10分の1ですね。

体重60kgの人間だとしたら1日に6Kg食べることになります。
ごはん茶碗1杯を150gとすると、1日に40杯食べる計算。
そのくらい食べないと体を維持できないのです。


さらに植物は「消化に悪い」という特徴も持っています。

そこで現代の草食動物は一生懸命「咀嚼」しています。
牛や羊って、いつも口をモグモグさせているイメージ無いですか?

そうやってちゃんとすりつぶしてから飲み込まないと、消化する事ができないのです。

特に牛などは、一度飲み込んだものを吐き出して再び咀嚼する「反芻(はんすう)」という行動が有名ですよね。



さて話を恐竜に戻します。

アルゼンチノサウルスたちが1日にどのくらいの量のエサを食べていたか、正確な量はわかりません。

彼らが内温性(恒温動物)だったのか外温性(変温動物)だったのかでも大きく変わってくるため、予想することが難しくなっています。

ただ「とてつもない量の植物を食べていた」ということに間違いは無いでしょう。

そうなってくると、牛のようにいつまでもモグモグしてる食べ方では間に合いません。

それこそ寝る間も惜しんで食事をしていても、必要な量のエサを食べ終わるのに間に合わなかったかもしれませんね。


そこで彼らは口で咀嚼するのではなく「胃で食べ物をすり潰す」という方法で食事をしていました。

いくつかの恐竜の化石で、お腹の位置から複数の小石が見つかっています。

これは恐竜が生前に飲み込んで胃の中に入れていたもので、そのまんま「胃石」と呼ばれています。

胃の中で、食べた植物と小石を一緒にジャラジャラさせることで、歯で咀嚼したのと同じ状態にしていたのです。

こうすると、食事の時にモグモグする必要が無くなります。


現代の草食動物の歯は我々の奥歯のように先が平らになっていて、植物をすり潰しやすくなっています。

それに対して、竜脚類の歯は意外と尖っていて「すきっ歯」なんです。



彼らの食事は以下の通り。

まず枝ごと葉っぱを咥えます。

そのまま顔を引いて、落ち葉を集める「熊手」のように歯を使い、木の葉っぱをむしりとります。

そのまま噛まずにゴックン。

また新たに枝を頬張って……の繰り返し。

Jordan Mallon, CC BY-SA 2.5, via Wikimedia Commons

咀嚼の作業を胃に任せることで、口は食物を体内に取り込むのに専念できるようになり、効率的に食事がとれるというわけです。

こうして竜脚類達は、1日に必要な量の食事を、その日のうちにとることができていました。

─つづく─


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