恐竜の卵の化石は今までにいくつか見つかっています。
しかし、全てのものが何サウルスの卵か分かっているわけではありません。
卵の近くに大人の恐竜の化石があったとしても、その恐竜が産んだ卵なのか、食べるために他の恐竜の巣から盗んだ卵なのかは分かりません。
誰の卵かを知るためには、その中に生まれる前の赤ちゃん(いわゆる胚)が入っている必要があります。
現在、卵が見つかっていることで有名な恐竜と言えば、マイアサウラ、プロトケラトプス、シチパチ……あたりでしょうか。
これらは全て白亜紀の恐竜達です。
そんな中、ジュラ紀前期の地層からマッソスポンディルスの10数カ所の巣、卵の中の胚、産まれた赤ちゃんの化石が見つかりました。
これにより、恐竜がどのように成長していったのかがわかります。
マッソスポンディルスは首が長く、2足歩行恐竜ですが、子供の頃は首が短くて4足歩行だったことがわかりました。
また、体は小さいのに目の大きさは大人とあまり変わらなかったので、相対的に目が大きくクリクリしてて、可愛い顔をしていたことでしょう。
我々人間は、受精卵が細胞分裂していくと魚の稚魚のような形になります。
そして手足ができてトカゲのようになり、尻尾が無くなって……産まれたときは猿のような姿ですね。
2本足で歩き人間らしい姿になるのはその数年後です。
実はこの変化、人間が辿ってきた「進化」の流れを再現しているんです。
この「個体発生は系統発生を繰り返す」という現象は「生物発生原則」や「反復説」と呼ばれています。
つまり、マッソスポンディルスの成長過程を詳しく調べれば、そこに至る進化の流れも分かってくるかもしれませんね。
ところで皆さんは「恐竜の卵」というとどんなものを想像するでしょうか。
現生生物で恐竜に近い「鳥」も「ワニ」も硬い殻をもった卵を産むので、恐竜の卵もきっとそのようなイメージでしょう。
実際、少し前までは研究者たちもそう思っていました。
ところがマッソスポンディルスの研究チームの発表によると「卵の殻の厚さは0.1ミリしかなかった」と言うのです。
最近の研究で「初期の恐竜の卵は、現生のヘビやウミガメのような柔らかい殻をもっていた」ということがわかってきました。
恐竜が進化していく中で、肉食が多い獣脚類や、マイアサウラなどの鳥脚類は卵の殻を固くしていったようです。
上で卵が見つかっている恐竜は白亜紀のものが多いと書きましたが、最初のころの恐竜の卵はみんな柔らかかったので、化石に残りにくいのかもしれません。
(プロトケラトプスの卵は白亜紀だけど柔らかかったようですが)
なぜ硬い卵に進化したのでしょうか?
敵に食べられないため?
いや、殻が硬くても結局食べられちゃいますよね。
どうやら殻の進化は「抱卵」にあるようです。
卵が丈夫になったことで、親がその上に乗って温めることができるようになりました。
さらに効率よく温められるように体に羽毛が生え……
恐竜は鳥になっていったんですね。