イクチオサウルスは一見するとイルカにそっくりですね。
しかしイクチオサウルスは爬虫類で、ご存知の通りイルカは哺乳類。両者は全くの「他人のそら似」です。
どちらも海の中で泳ぎやすいように進化した結果、たまたま同じような結果に行き着いたと言うことです。
こういうことは動物界ではよくある現象で「収斂(しゅうれん)」と呼ばれています。(詳しくは当館のアフリカフロアのパネルをご覧ください)
さて、似たもの同士の両者ですが、よく見ると大きな違いが一点あります。
それは尾ビレの向きです。
イクチオサウルスの尾ビレは魚と同様に縦長で、左右に振って泳ぎます。
対してイルカの尾ビレは横長で、上下に動かします。いわゆるドルフィンキックと言うやつです。
この2種の違いは「哺乳類」と「それ以外の脊椎動物」の特徴を表した、面白い差だと思います。
前述の通り、魚は体を左右にくねらせて泳ぎます。
オタマジャクシは魚から進化した両生類ですが、魚と同じような泳ぎ方をします。
さらに進化した爬虫類はどうでしょうか。
トカゲやワニを上から見ると、体をS字に曲げながら歩くのがわかります。
via Wikimedia Commons
ヘビも同様ですね。
このように、魚から進化した「脊椎動物(骨を持つ動物)」は、多くの種が体を左右に動かすのを得意とします。
一方で、私たち人間を含む「哺乳類」はどうでしょうか。
犬や猫が走る姿を見ると、体を縦方向に曲げ伸ばししています。
オットセイやマナティなどの海獣達は、イルカと同じく横長のしっぽを縦方向に動かして泳ぎます。
我々が泳ぐときの「バタ足」も縦の動きですね。
もし、足先に人魚のようにヒレを付けて泳いだとしましょう。
魚みたいに横に振って泳ぐのはかなりしんどそうですよね?
このように、哺乳類は縦方向の動きを得意とします。
おそらく四本の足で陸上を歩くのに特化した進化をする過程で、縦方向の動きに変わっていったのでしょう。
現在の泳ぐ哺乳類達は、陸上で進化した哺乳類が再び海に戻ったものだと考えられています。
つづく