化石戦争

恐竜の化石は世界中どこからでも見つかっています。

しかし、ティラノサウルスやステゴサウルス、トリケラトプスなどの超有名な恐竜は、アメリカやカナダなどのいわゆる『北アメリカ』から多く見つかっています。

なぜ北アメリカから多くの恐竜が発見されているのでしょうか。
実はこんなお話があります。


むかしむかし、150年くらい昔。
アメリカのあるところに「あわてんぼうのコープ」と「几帳面なマーシュ」という2人の古生物学者がいました。

2人は一緒に化石を発掘しに行ったり、発見した新種の生物に相手の名前をつけるなど、とっても仲良しでした。

「良きライバル」でもあり、競い合うように新種の恐竜を発見していきましたが、時が経つにつれ徐々にお互い関係に亀裂が入っていきました。
どちらもプライドが高く「相手よりも多くの化石を発見すること」に必死になっていったのです。

そんなある日、あわてんぼうのコープは発表した論文で大きなミスをしてしまいました。
自分のもとに送られてきた新種の生物の化石を復元する際に、間違って尻尾の先に頭をつけてしまったのです。

本来であれば「首が長くて、尻尾が短い」のに、「首が短くて、尻尾が長い」生物として復元画を描き「エラスモサウルス」と名前を付けて発表してしまいました。

コープが描いた復元図。本当は左が首で、右が尻尾。
Edward Cope., Public domain, via Wikimedia Commons

このミスに気付いたマーシュは大げさに指摘し、コープに恥をかかせました。
コープは間違った図が乗ってしまった掲載誌をすべて回収しようとしましたが、マーシュはそれをも邪魔したそうです。

こうして二人の争いが本格的に始まりました。

化石が出る採石場の管理人に「見つかった化石は自分にしか知らせないように」と賄賂を渡したり、相手の発掘仲間を金で引き抜いたり、逆にスパイを送り込んだり、相手が発表した論文にケチをつけたり……

挙句の果てに採掘場を爆破したり、鉄砲を持って相手の発掘作業を邪魔したりというところまで発展し、お互い常に武装しながら発掘作業を行ったそうです。

結局二人は資金を使い切って破産し、名誉も失って破滅しましたとさ。



このエピソードは化石戦争(または「骨戦争」)と呼ばれています。

お話し的にはバッドエンドな感じですが、二人が競い合ったおかげでたくさんの新種の恐竜やその他の古生物が発見されました。

その中には「ステゴサウルス」「トリケラトプス」「アロサウルス」「ディプロドクス」のようなメジャーな恐竜もたくさん含まれていて、間違いなく後世の恐竜学にとって多大な功績を残したといえます。

二人が最後まで仲良く研究すれば、もっと素晴らしい結果が出せたかもしれませんね。

【マーシュ(左)とコープ(右)】
Frederick Gutekunst,
Public domain, via Wikimedia Commons


4件のコメント

  1. 化石がたくさん見つかる裏で、こんな壮大な過去があったとは、、、
    驚きです!!

    1. ライバルの存在って大事ですよね。
      今回の話に関しては、結果的に良かったのか悪かったのか微妙なところですが(;^_^)

  2. この化石戦争で本来見つかるはずだった化石も爆破されてしまったんですかね…そう思うと悲しいです


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