恥ずかしながら「隕石の衝突により恐竜が滅びた」と初めて聞いたとき、私は「隕石の衝撃ですべての恐竜が吹き飛ばされて死んだ」というイメージを持っていました。(幼稚園児だったので……)
しかし、実際はそうではなかったようです。
それでは地球に隕石が落ちてきた日、どんなことが起こったのか見ていきましょう。
6600万年前の6月、それはやってきました。
もしかすると、数日前から彗星のように上空に見えていて、目の良い恐竜の中には気づいていた者もいたかもしれません。
それは直径10kmを超える巨大な隕石(または小惑星)でした。
秒速20〜30km、時速10万kmで落下してきた隕石は、大気圏に突入した瞬間空気を圧縮させて眩く光ります。
おそらく、この瞬間にほとんどの恐竜が気がついたことでしょう。
何が起こったのかと慌てふためく恐竜達の目に、2度目の閃光が襲いかかります。
隕石が現在のメキシコ・ユカタン半島に衝突しました。
衝突した瞬間の爆発は、広島に落ちた原爆10億個分の威力だったと言われています。
地面は液体のように波打ち、深さ40kmも抉られ、直径170kmのクレーターが作られました。
ユカタン半島から半径1000km以内にいた恐竜たちは、一瞬で蒸発してしまいました……。
その衝撃で起きた地震は、なんとマグニチュード11。
崩れた崖の生き埋めになる者、倒れた木の下敷きになる者……
場所によっては、何もないところにいても揺れる地面に吹き飛ばされて骨折する恐竜もいたはずです。
そして爆風。
衝突により起きた風(衝撃波)は、ティラノサウルスたちが暮らす北アメリカでも数百mもあったはず。
風速40mもあれば電柱や家でも倒れるくらいなので、多くの恐竜達が吹き飛ばされたことでしょう。
直撃による即死を免れた恐竜達も、初めて体験する規模の地震と爆風に大パニックです。
そこに追い打ちをかけるように巨大な津波が押し寄せます。
爆心地に近い沿岸では、高さ数十mの津波がジェット機並の速度で押し寄せました。
海岸にいた生物はもちろん、海の生物も大打撃です。
内陸にいたものは無事かというと、そんなことはありません。
隕石の衝突により巻上げられた岩石が、真っ赤に燃えながら落ちてくるのです。
その火が木に燃え移り、森が燃え、そこに暮らしていた恐竜達は逃げまどいます。
さらに、そこに降り注いだのはマイクロテクタイトの雨。
マイクロテクタイトとは、衝撃で溶けて飛び散った岩石が、空中で急激に冷やされてできたガラス玉です。
直系1mmほどのガラスの弾丸が何十億個も降り注ぎ、恐竜たちの体を撃ち抜いて行きました……。
これが、その日に起きたとされる悲劇の概要です。
しかしこの畳みかける災害でも、すべての恐竜が死んでしまうことはありませんでした。
恐竜は世界中に君臨していて、隕石衝突地点から見て地球の裏側にもたくさん生息していました。
彼らの多くは、絶え間なく起こる余震や、消えない山火事に怯えながらもまだ生きています。
その後、最後の恐竜が命を落とすまでに何があったのでしょうか。
-つづく-